ー これは何ですか? 棒っきれ?
「サクランボ 1年生。ただの棒ですね」
ーこれがサクランボになるのですか?
「下の方のちょっと折れ曲がってテープを巻いてあるところが「接ぎ木(つぎき)」と言って、下の部分の台木(だいぎ)と上の部分の実桜をつないでいる場所です」
ー 台木……「き」じゃなくて「ぎ」。だいぎ。
「台木は青葉桜で、桜の台木によく使われるものです。接ぎ木で作られたものは、すべてクローンです。日本中に植えられているソメイヨシノも、もとは一本の桜で、すべて同じクローンです。接ぎ木は面白いです」
ー なんとすべてクローン。あの桜、この桜、すべてクローンとは
「例えば、台木の枝に、いろいろな品種の枝を継ぐこともできます。一本の木に、佐藤錦、紅秀峰、紅きらり、、、、などいくつもの品種の実を成らせることも可能です。実際にわたしの友達がやっています。さらに驚くべきことに……!」
ー なんでしょう?
「なんと!」
ー なんでしょうか!
「なんと、一本の木に、サクランボだけでなく、ナシや、リンゴもできます。写真でしか見たことがありませんが、できるらしいです。ここまでくると恐ろしいですね」
ーなんと!